ゴールデンウィークが明けた頃、与那国島に4日間滞在しました。
与那国島は、沖縄本島から南西へ509キロ(石垣島からは127キロ)、台湾との距離は111キロの位置にあり、日本最西端の国境の島です。晴れていたらごく稀には肉眼で台湾が見られるのだとか。ドラマ『Dr.コトー診療所』のロケ地と言うとイメージがつく方もいるかもしれません。
減少傾向にあり2015年に1490人だった島の人口が、翌16年には1703人に増加しました。島の南側に与那国駐屯地が作られ、陸上自衛隊員と、その一部の方の家族がやって来たからです。
南西諸島の防衛の強化として、奄美と宮古島でも基地建設が進み、私が住む石垣島でも候補地が上がり、測量に着手するかという段階にあるのですが、与那国では2年前に配備され、すでに島の人たちと共に生活されています。もちろん自衛隊の駐屯地がある街の暮らしというのが珍しいことではありませんが、誘致にいたる経緯を思うと、しこりが残っているのではないかと思わずにいられませんでした。
遡って2015年2月、自衛隊基地建設の賛否について民意を問う住民投票が行われました。人口が少ないことが理由だと聞きましたが、中学生以上に投票権が与えられた異例の投票となりました。この頃のニュース番組で、「親や教師の意見に左右されずなるべく自分で考えてほしい」と言ったお父さんの特集をよく覚えているのですが、その話をすると年配の男性は「実際には親の選ぶ方へ投票させられる子供が多かったと思う」、別の女性は「子供まで巻き込んで、恥ずかしい」と話してくれました。与那国町は選挙の際の投票率が毎回高く、陸自配備の是非に限らず、小さな島だけに毎回対立と分断の傷跡が深く残る性質があり、お話をうかがったほぼ皆さんがその事について語られました。
住民投票に話を戻しますが、賛成が過半数を占める結果に。この時「暮らしがどう変わるのか不安」「何か問題が起こるのではないか」と反対票を投じた方お二人にお話をうかがうと、2年間の中でその不安はほとんどなくなったようで、
「生活の中で接点があまりないのもあるが、これまでトラブルも聞いたことがないし、元々の住民の前で特に礼儀正しくするよう教育されているんでしょうね」
この「住民への対応」について居酒屋経営の方は、
「隊員たちは島の人たちに接する時は気を遣っているのがわかり、気の毒だ。隊員同士で話している時は安心しているのがよくわかる」
と話してくださり、生活の面では受け入れる側と同じように新たに入る側にも当然ながら苦労が多いことを思い出させてくれました。と、そんな時に店の常連客となった隊員の一人がやって来ました。単身で与那国に来ている彼は、自衛隊員に好意的なご主人のもとに安心して食事に通っているようでした。「一人では食べ切らないから」と注文した料理を、同じく一人で来ていた私にシェアしてくれました。
(長文を読んでいただきありがとうございます。後編では、2年間で起きた島の生活の変化についてうかがったお話を、もう少しお伝えしたいと思います。)
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「沖縄から、伝えたいこと」は、石垣島に半年間生活の場を移したTWFFの蔵原実花子が見聞きし、感じた「沖縄」を発信していくシリーズです。どうぞよろしくお願いいたします。